(焼き直しの)病気のことその3
さて、十日間の入院生活のスタートです。
毎朝、食事前に検温と血圧測定。そして投薬と点滴。
投薬と点滴は、血栓を溶かし、血管を広げ、血圧を下げるためのものでした。
五日後にはリハビリが始まるのですが、それまでは
ひたすら食べて寝て、の生活が続きました。
御多分に漏れず、テレビを見たり、窓の外を眺めたり、という
日々でした。
ああ、あの頃に「なつぞら」放映していれば、
入院の徒然もずいぶん慰められたろうになあ、
というのは、勝手な感想。
私の症状を見ながら、医師を中心に、
きちんとチーム医療のプログラムがたてられていたようです。
五日の入院と静養の結果、血圧も低下し、
まず、理学療法(昔は物療とも呼ばれていたらしいbyデジタル大辞泉)です。
このリハビリは、「身体に障害のある人に対し、運動療法・マッサージなどにより、リハビリテーションとして行う治療」(デジタル大辞泉による)で、
入院後も身体的な障害を自覚できなかった自分には、
「いらないんじゃない?」と思っていたのですが、
今にして思えば、あの時のリハビリのおかげで、(身体的に)普通に
生活できているのかもしれません。
手すりと手すりの間を歩いたり、手足をマッサージしてもらったり、
というプログラムがメインでした。
もう一つのリハビリは「作業療法」です。
このリハビリは(デジタル大辞泉には)、
「病気の回復や社会復帰の促進を図る精神療法」とあります。
作業療法士さんが話した一つのストーリーを、どこまで理解していて、
どこまで再現できるか、というような内容でした。
実は、前の記事で記した、脳梗塞で入院した同僚ですが、
入院してから少し「?」というところが顔を出していたのです。
今でも忘れられないのは、
「今日の17時までに必ずこの書類を仕上げること」という指示を
出していたにもかかわらず、書類が上がってこない。
というか、全館放送をかけても反応がない。
そこで携帯に電話すると、
「今日はどこそこの○○で、××の特売をやっているので、
車で向かっている」という返事。
「例の書類は?」という問いかけにも「ああ。」というだけ。
「すまないけれど、今すぐ職場に戻って、仕上げて。」
といって職場に呼び戻し、書類を作らせた、ということがあったことです。
これ以外にも、似たようなポカが多く、私も上司への説明に困ったことが
何度かありました。
作業療法士さんに、この話をすると、
「作業療法というのは、そうならないためのリハビリである」旨の
返事をもらいました。
そして、「今のあなたの様子を見ていると、全然心配はないから。」
というありがたいお返事。
なによりホッとしました。
午前中は、点滴と静養、午後はリハビリ、という十日間の生活が終わり、
無事退院の日を迎えたのでした。
そのころには、病院の向かいにあるマンションの、例の車のフロントマスクも
一つに見えるようになっていました。
退院の日のMRI検査の結果、
「左脳幹の一部の梗塞は治癒していない。」とのこと。
右手に少なからず後遺症が残るでしょう、と言われたのですが、
その後遺症は具体的には、右手のしびれ、右手の温感の異常(寒いのに暑く感じたり、暑いのに寒く感じたり)というものでした。
続きます