怖い話その2
今週(もう先週ですが)のお題「怖い話」に引っ張られて、前回は
幽霊に遭遇したお話を書きました。
今日は、それよりずっと昔、昭和三十七年か、三十八年頃のお話です。
当時私は大田区雑色という町に住んでいました。
隣は広い空き地、裏には段ボール工場、あとは多分普通の民家。
ウチには風呂がなかったので、行水を使ったり、
洗濯機の洗濯槽で水浴びをさせられた記憶があります。
ちょっと離れたところに銭湯があり、たまにそこへ通っておりました。
その銭湯のお湯が黒かったのを覚えています(ネットで調べてみると大田区には
黒湯温泉というものがあり、それだったのかな、と思います)。
そんな昭和三十年代終わりころ(1964年の東京オリンピック以前、東海道新幹線も
開通していませんでした)。
ある日、その日共稼ぎだった両親が在宅していたのかは記憶がありません。
自分がウチ(四畳半一間の借家住まいでした)を出て、目の前にある通りを左に
曲がったところで黒いコートの男の人(これだけは記憶がはっきりしています)に
「坊や、おいしいものあげるからおいで。」と声を掛けられたのです。
私は何も言わず家へ逃げ帰りました。
あの時おいしいものにつられてついていったら...
未だに忘れられない怖い思い出でした。